38度線を越えて

著者/友永倬夫さん

戦火に追われ地獄からの脱出!
忘れられない記憶

昭和11年に朝鮮で生まれ、昭和21年に帰国。当時を回想しながら、「引き揚げの記録」を一冊の本として出版。

当時は9歳ぐらいの頃で、記憶も薄れて、記録として残すのは大変な作業ではなかったですか?この本を出版されたのは?

二つ理由があります。
一つは、相次ぐ戦争の中で育ちまして、大戦末期の8月9日には、突然ソ連の参戦、と同時にソ連軍による空襲、そして最後の土壇場には、ソ連軍上陸によって地上戦の戦火に追いまくられて、まさに昭和の戦乱の真っ只中を幸運にも生き抜いて来た証を自分史に書き留めておきたかったこと。
photo_0042_02もう一つは、明治建国以来、我が国の「かたち」を築きあげてきた祖父や祖母そして父達「明治生まれの人々」が、時代と戦った逞しい生きざまと、律儀さとを書き残しておきたいと思ったことです。
比較的に記憶が風化しなかったのは、常に生命の危険、死との背中合わせの出来事だったからでしょう。

タイトルはどのような思いでつけられたのですか?

ただ単に、命からがら国境38度線を越えたというだけでなく、日本の敗戦が生んだ、歴史の大きな転換点を象徴する「北緯38度線」を越えて、大げさに言えば、歴史の試練を乗り越えて生き抜いてきた誇りと自負をタイトルに託したいと考えたからです。

ゆるりに本づくりを依頼されてみていかがでしたか?

なにせ初めてのことでしたので、いろいろと詳細にわたってアドバイスを受け、やっと出版できましたことを、心から感謝しております。

出版をされた今のお気持ちは?また、どなたに読んでもらいたいですか?

今まで胸につかえていた澱のようなものを、やっと吐きわだかま出して、長年の心の蟠りから解放された思いでホッとしています。そして、この本が祖父母や父母や妹の供養になれば幸いと思っています。昭和という時代が生んだ私の体験したこのような悲劇が、再び訪れないことを心より願って、21世紀を生きる子どもや孫達や若い世代に読んでもらいたいですね。

 引き揚げの際、最愛のお母様と妹さんを亡くされて、約60年余りの月日が流れても忘れられない戦争の記憶。忘れさられていく戦争体験を一冊の本に。