おだいじに ~占部亀雄遺稿集~

著者/村上 惠子さん

book_171“おだいじに”と患者さんをいたわる声がまだ聞こえてきそうです

戦時中の軍医としての心境、医師として、夫として、父親として父の生きた証をできる限り残しておこうとまとめた遺稿集

遺稿集を出版されようと思われたキッカケは何ですか?

父が亡くなった後、母が何気なく出してくれた特徴のある字で綴られた父の原稿を読んでいくうちに、出来るだけ伝えておきたいと思ったのが始まりです。

どのような内容でしたか?

原稿用紙に何度も同じ様な書き出しで、繰り返し書いては止め、また書き出しては止めという様な原稿が数多くありました。
微妙に表現が変わってはいましたが、どの原稿にも、戦地パラオへ向かう前後の緊迫した状況や心境が語られていて、原稿を起こしながら、私も時代の激流に飲み込まれそうな気がしました。
夢を語れなくなり、気持ちを押し込め、わがままが許されなくて、不安な気持ちの毎日を、若い日の父がどのように送っていたのか垣間見る思いがしました。

出版されてのご感想は?

そうですね、生前の父が、一切の言い訳を許さなかったこと、一緒に涙を流してくれたこと、少年のように純粋なところがあったことなど、無意識のうちに重要なメッセージを発信続けていたようで、それは私だけに発信されていたのではなかったことが、皆様からの寄せられたメッセージからも感じられました。
遺稿集作成には懐かしさと、心の痛みを伴って、充分な準備が出来たとは言えないところもありますが、それでも不安や迷いもなくできたのは、やはり父がそっと背中を押してくれたのではと感じています。

88歳でお亡くなりになったお父様の遺稿集を出版したいとご相談を受けたのは2年ほど前でした。
妹さんとお二人で試行錯誤されながら、まとめ上げられました。